おしらせ

模様染めについて⑤ 絞り染

みなさん こんにちは

前回までは友禅についてのご説明でしたが、今回は絞りについて記載してみます。

私の知り合いにも絞りの職人さんがおられますが、こちらでも後継者の問題で悩まれておられる方が多いようですね。

 

絞り染

京都では京鹿の子の名称でなじみ深く伝統的工芸品にも指定されております。模様染めの中で最も手間と時間のかかる加工であるばかりでなく、糸解きが終わるまでの絞り染めの良し悪しがわからないので、すべての作業工程は余程の熟練と工程管理ができている必要がございます。

絞り染めは部分的に生地を括り、縫い、締めて、防染と同時に凹凸の立体感を表すために図案は大まかで、絞りの特徴をいかす表現が大切です。

 

 

 

 

 

 

 

●絞括(コウカツ)

絞りは大きく分けて、括り絞り、縫い絞り、帽子絞り、染め分け絞りになり、それぞれがまた細分化されています。絞りの括る圧力は均一でないと斑染めになるので、人が代わって絞ることはございません。

 

 

(1)疋田絞り

これは京鹿の子を代表する高度な技法です。道具を使わず、指先の作業だけで絞り上げます。この中には、本疋田、中疋田、バラ疋田、京極疋田などの種類があり、これらの違いは絞る時の糸を巻く回数によって生じ、回数の多い順から、本疋田、中疋田、京極疋田となり、疋田を散らしたものが、バラ疋田です。当然、糸を巻く回数の多いものが白場の多い上りとなります。疋田絞りは以前は京都近郊農村の主婦の内職により、この様な婦人を『ゆいこ』、『絞りこ』等と呼びました。また、京都周辺でも疋田は大原野から丹波路、一目絞りは竹田から山城といった地域差をみることが出来ます。疋田絞りは、①粒をつまむ時に布を斜めに伸ばし四つに折り、②つまんだ粒を右手前の方へ少しねじる様にしてもどして、先に絞った粒と直角に開く様にし、③糸を根元から上へ順に4~5回巻き、④最後に二回括って一粒が出来上がります。生地は、平綸子が絞り易く、駒綸子は絞りにくいです。粒は45粒位が適当で、50粒までが現在ではほぼ上限となります。

 

 

(2)一目絞り

疋田絞りが主として面的な文様構成に用いられるのに対し、一目絞りは主として線描効果を表現します。括り方は疋田絞りと同様ですが、括り用の糸が細く二度だけ括るところが相違しています。また、疋田絞りの様に粒の位置・数が指定されていないことも特色となります。

 

 

(3)桶絞り

絞り染め用の桶を使って染め分ける技法で、染上りの効果から輸出し(輪郭全体が染出されたもの)と段物(斜段等布幅の端から端まで一色で抜けているもの)に分けられます。一桶で染められる量は柄数によって決まり、一反から最大四反まで入れられます。また、仕事量は一人の職人で、一日最高三桶が限度であり、柄によっては一個しか出来ないこともございます。桶は直径一尺二寸、高さ八寸のものを用い、これを専用に製造されます。工程としては、①模様の輪郭線をぐし縫いし(糸入れ)、②さらに、これを平均してしめていきます(根寄せ)③桶は水につけておき、蓋の周囲、桶の口に紙を当てて、木のアクが出ない様にして準備しておきます。④ついで、桶の中に布の染めない部分を入れ、染める部分を外に出し、根寄せした所を桶の縁に並べて桶針で止め、蓋をします。桶は両面を使用するので両側の蓋をしたら、それぞれに中央にサン木をおき、その両端を麻ロープで縛ります。桶針を抜いて麻ロープをさらに強く縛り、最後にすき間に綿を込めて完全に防染します。(桶込め)

 

 

(4)帽子絞り

染め分けの部分の大きさによって、大帽子、中帽子、小帽子に分けます。中帽子以上は、必ず中に芯を入れます。絞り方は、桶絞りと同様、糸入れされたものの糸を引き、布のくぼみに芯を入れます。そして、残りの糸で根元を巻いていきます。帽子の中に入る部分を小さくまとめ、その上を模造紙で二回半、ビニールで二回半巻きます。さらに、根元より糸で締め、先端に糸をかけて括り出来上がります。帽子には、この他、両端に生地が出る太鼓帽子、防染部分が多い時に使う逆帽、布の両面から綿をとじつけて、周囲をぼやけさせる綿帽子(ほたる)等があります。さらに、小帽子は、小さな柄を出すのに使い、中に芯は入れません。

 

 

(5)縫絞り

これには次のものがあげられる。技法による名称―平縫絞り・折縫絞り・合せ縫絞り・巻絞り・ミシン絞り・紙当て絞り。出来上り効果による名称=養老絞り・杢目絞り・唐松絞り・日の出絞り・白影絞り。いずれも、平縫い・折縫い・巻き縫い・合せ縫いなどの方法で布を縫い、これを引き締め縮ませることによって、防染を行います。

 

 

(6)蜘蛛絞り

クモ絞りは巻上げ絞りの一種で、襞を充分に取って巻き上げるので、出来上りがクモの巣の形となるところから、この様な名前がつきました。これは、絞りの中でも最も原始的な技法で有松絞りの発祥もこの技法からだと思われます。機械を使わず手で絞る手蜘蛛は、布を鉤針に引っ掛け、手元に引張り、襞を整えて根元から細く巻き上げて、また根元へ巻き戻り次へ移ります。さらに、この絞りは明治時代より機械化されており、現在では動力式機械で大量生産もされております。類似の絞りで技法のやや違うものに、巻上げ・竹輪絞り・根差絞り等があります。

 

 

(7)手筋絞り

この中には、みどり絞り・柳絞り・手筋金通し絞り・機械絞り・鎧段絞り・山道絞りなどがあります。この様に、出来上り効果やその技法から種種の名称があるが、いずれも布を縦に筋目をつけて折りたたみ、上から糸で巻きつけていくという方法をとっています。代表的な手筋絞りの場合、その技法は、①布の先端を所定の襞数に折りたたみ、裏から芯をあてがい、襞が崩れないように糸を巻きつけます。②さらに、襞数の通りにきれいに筋目をとり、布の耳端は中へ入れ込むようにして芯の上にかぶせ、掛け糸を巻いていきます。出来上りは縄伏となります。③さらに、もう一度細かい間隔で上巻きして完成となります。

 

 

(8)機械鹿の子絞り

指先の作業のみで行う疋田絞に対し、絞り道具を用いて鹿の子を絞るもので、縦引き鹿の子・横引き鹿の子・突出し鹿の子・ばい絞り等があります。これらは京都周辺には少なく、最も盛んなのは、有松・鳴海周辺です。手法の例として、突出し鹿の子の場合をあげると、柱の上端を少し丸くしたコンクリート針を立てたものを絞り台として使用し、①指で針をはさむようにしながら布の粒の位置を針にかぶせ、布を人形に着物を着せた様な形に折ります。②糸を二回巻き、③さらに、糸をかけて粒の根元を括ると同時に、布を針から抜きとります。この糸を巻く回数をふやし、巻き上げてから巻き下げて、根元を一回括れば、ばい絞りとなります。

縫取りから機械鹿の子までの絞りは、京都周辺で生産される疋田・帽子等とは異り、名古屋市郊外の緑区有松町周辺が主な産地です。この地方にはこの他、根元を一回ずつしか括らない三浦絞り、長尺の棒に生地を巻きつけて染める嵐絞り等がございます。

 

絞り技法

 

 

(9)絞りロウケツ

これは防染することなく生地をステンレス製の簀の子、または、木枠に竹製の網目を貼った簀の子の上に布を適当にしわづけして並べ、その上から染液を振りかけ、さらに裏返して染液を振りかける方法です。これにより突出した部分は染まるが、谷になった所はほとんど染まらず、しわが均一でない為におもしろい染上りとなります。また、表裏別々の色を使うことも可能です。

 

 

(10)板締め絞り

布をある決まったたたみ方で折り重ねると共に、型板でその布をはさむ様にして重ね、ずれたりはずれたりしない様に、しっかり止めます。これを、そのまま浸染すると、型板が防染の役割を果し、型板からはみ出した部分の布が染まります。

 

 

●漂白

絞括での汚れを取り除き、下絵の青花を抜く(花抜き)為、さらに染色での発色を良くする為に漂白が行われます。これは、①まず生地を水につけて充分に水を含ませます。代用青花の場合は、澱粉が主成分の為、湯につけるだけでも抜くことが可能ですが、本青花の場合、一晩位は必要です。②次に還元剤のハイドロサルファイト液につけて漂白します。本青花の場合80℃の液に15~20分つける必要があり、ハイドロサルファイトは生地六反に対し20gが必要な量となります。さらに液中では、布がもつれたり、からまったりしないように竹でかきまわす必要があります。③さらに、この液より引き上げたものを水桶に入れ、流水で洗います。

 

 

●染色

絞り(疋田等)は水に浸すと裏側に巻き込む性質がある為、むら防止の為に中裏に併せて両耳端をとじつけるといった下準備が必要となります。こののち、染色(浸染)に入ります。絞り染の場合、染料の吸収が悪いと鹿の子目がぼける(=まわる)ため、吸収の良い、染め足の速い(染着時間の短い)染料が使用されます。これは、他方、むらになり易い欠点があるので、温度調節等で均等な染め具合を得る工夫が必要となります。塩基性・酸性・直接の各染料を使用し、適切な均染剤を用います。

作業工程は、

①桶に染液を作り温調します。

②生地を液につけて棒でかきまわし、たぐってむらなく染着するようにします。

③染められた生地を簀の子に上げ、染め着いた色相を見ます。

④さらに、染液を調節して染浴の再準備を行います。

⑤再び生地を液に浸して上りを見極めます。

⑥この工程を3回くり返して、指定の色相に到達させます。

⑦水浴中に放置します。(水洗)

⑧乾燥させます。

 

 

●糸解き・ゆのし

染め工程を終えると、濡れた状態や自然乾燥の状態で糸解き工程に入ります。まず濡れた状態のものは自然乾燥させ、さらに、『ほいろ』を使って乾燥させます。そして、解き工程に入りますが、これは絞りの種類によって異り、目を括る様式のもの(疋田絞り・一目絞り・横引絞り・ばい絞り等)では、二人一組で製品の両端を持ち、結い終りの方から布をのびる方向(斜方向)に右斜、左斜、交互にひいていきます。小帽子は原則として手で一つ一つ取ります。また生地が先端まで入り込んでいないので、ペンチで引っ張ることもあります。糸入れの糸は帽子を除いた後、手で一つ一つ抜き取ります。中帽子以上では、掛けてある麻糸を締めた方向と反対の方向に緩めハサミ入れてほどきます。この時、生地を切らないように注意しなければいけません。蜘蛛絞り等も、帽子と同様、ハサミで糸を切ってほどきます。この他、手筋絞り等は道具を使用して解くこともあります。最後に、ゆのし工程ですが、絞り風合いを大切にし、絞りを伸ばしてしまわない為に手のしを使うことが多いようです。

 

次回は絞り染の種類について記載したいと思います。

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